GSの思い出

GSの思い出(8)

ある時、増田所長が、「GSもう1台いらんか?」とお尋ねになられました。「これ以上GSもらってどないすんねん」と思う気持ちが80%でしたが、残りの20%が勝り、即座に「ハイ!欲しいです。」と答えてしまいました。
「ほな行こか!」「エー。今からですかー」急やな、と思いながらも、2人一緒にバッテリーとブースターケーブルを持って、車に乗り込みました。「オーナーは、どこら辺の方ですか?お若い方?何色のGS?動きますか?」と車中で増田所長を質問攻めにしたのを覚えています。場所は、京都の古くからのベッドタウンの長岡京市でした。お宅は、旧い建売住宅で玄関の横に木の引き戸のガレージがありました。モノクロ写真の様な家の前に紫陽花が鮮やかに咲いていたのを覚えています。開けたら倒れるんじゃないかという引き戸を開けますと、ホコリだらけの紺メタリックのGSがうずくまって寝ていました。
「珍しい色ですねえー!」と少々はしゃいだ私ですが、振り返ると、そんな私を無視するかのように、70歳ほどのおじいさんと静かに話をする、所長・・・・。
実は、このGS、この御主人が病気の奥様を病院へ送り迎えする為に10数年前に購入された車でした。かかりつけの病院まで距離があり、なるべく奥様に負担を掛けぬよう、乗り心地がソフトな車をと、車趣味が無い上で探されたと聞きました。
残念な事にこの日の1年前、奥様は他界され、それ以来GSは、ナンバーがついたまま、検査切れで放置されていました。
車を見れば女房を思い出すし、処分したら思い出が消えてしまう、というお気持ちだったと思います。ブースターケーブルでセルを長めにクランクした後、元気よくエンジンがかかり、ムク、ムク・・・と車高が上がり眠りから覚めました。その時初めて、このGSは、「おばあちゃんがいない!?」と気が付いたんではないでしょうか?
少し淋しい思い出を持ったこのGS。私が、乗って帰る時には、スフィアーの圧力が抜け、カチカチで、ご機嫌ななめでしたが、病気のおばあちゃんを乗せていた頃は、数あるGSの中でも特別ソフトに走っていてあげたんだろうなあと思いました。
(他のGSは、処分しましたが、現在でもこのGSは、処分する気になれず所有しています。)

つづく

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